ご出身は
 物忘れを考えるときは、まずは記憶について知らなければいけません。記憶は人の認知機能の基本と考えられます。
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 記憶の過程は、記銘、保持、想起の三段階に分けることが出来ます。 「記銘」とは外部の刺激がもつ情報を意味に変換して記憶として取り込むこと、「保持」とは記銘したものを保存しておくことで、「想起」とは保存されていた記憶をある期間後に外に表すことです。

 例えば、「セイシンカ」という音声を「精神科」という意味に記銘して、それを保持し、思い出すように求められたときに、それを想起して言葉に出したり書いたりすることです。
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 記憶といっても、その性質は多様です。例えば日本語の意味などはどんな時でも明確に思い出すことが出来ます。しかし、たまたますれちがった人の顔などは覚えていても短い時間です。同じ覚えること(記憶)でも、その性質が違うことがいえます。
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 記憶はその保持時間によって「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」に分けられます。更に、長期記憶にはその記憶される内容から、「宣言的記憶」と「手続的記憶」に分かれます。

 手続的記憶とは、普通はいちいち思い出さない記憶、つまり何気なくしていること、身についているものの記憶のことです。

 また、宣言的記憶とは言葉で説明できる記憶で、さらに「エピソード記憶」と「意味記憶」の二つに分かれます。エピソード記憶は「昨日、本屋に行って雑誌を買った」といった時間や空間を思い出せる個人的な出来事の記憶です。意味記憶とは「本は紙でできている」という様な一般的知識としての記憶です。
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 認知症の物忘れの特徴は「昔のことはよく覚えているけれど、最近のこと、ついさっきのことが覚えられない」によく表されていると思います。

 認知症検査の一つとして次のようなものがあります。

 まず、三物品の即時記銘として「猫、桜、電車」を記憶してもらいます。次に引き算と数字の逆唱を行い、注意をそらします。その後再び三物品の名前を思い出していただきます。アルツハイマー型認知症では、即時記銘は殆どの方ができますが、時間を置いた三物品の再生になると困難になります。

 すなわち、記銘力は残っていますが、記憶の保持と想起する能力が著しく低下しています。しかし、長期記憶(昔のこと)の保持と想起は比較的可能です。

 これらのことは大脳の病変とも関連しています。アルツハイマー型認知症で初期に見られる大脳の変化は、短期記憶に関連していると思われている脳の領域の萎縮が特徴的です。従って、前述のような記憶の障害と脳の画像所見がみられるとアルツハイマー型認知症が強く疑われることになります。