風邪をひいたとき、あごの下や首が腫れっぽくなったことはないでしょうか? 腫れているところに痛みを感じたことはないでしょうか? それは、リンパ節という臓器が腫れているのが原因です。今回はリンパ節に関係する病気の話です。

リンパ節とは?
 リンパ節という臓器があります。臓器といっても心臓や肝臓のような大きな物ではなく、数ミリくらいの小さな臓器です。全身にたくさんありますが、触ってもよくわかりませんし、普段は意識していないと思います。何をしている臓器かというと、外敵と戦うための兵隊が待機している前線基地だと思えば、少しわかりやすいと思います。

 私たちの身体は、細菌やウイルスと戦うために免疫というしくみを持っています。血液の中には白血球という細胞があり、これが細菌やウイルスを攻撃するのが免疫の働きです。白血球にもいくつか種類があり、リンパ球という白血球が重要な働きをしています。リンパ節という臓器は、このリンパ球という細胞(兵隊)が待機している場所です。体外から細菌やウイルス(外敵)が入ってきたとき、リンパ節に待機しているリンパ球が素早く免疫の反応を起こして、入ってきた細菌やウイルスを退治してくれます。

リンパ節が腫れる病気
 リンパ節は、免疫の反応を起こすときに腫れる特徴があります。リンパ節が腫れる病気を大きく分類すると、@何かの病気に対して正しい免疫の反応が起こっている状態A免疫の異常を起こす病気が原因で異常な免疫の反応が起こっている状態B悪性の病気があってリンパ節で増えている状態|の三つになります。

 @の代表が風邪です。風邪はウイルスの感染です。一般的な風邪ではリンパ節が少し腫れる程度ですが、特殊なウイルスが原因でリンパ節が驚くほど大きく腫れることもあります。

 Aは、関節リウマチや、膠原病と呼ばれる免疫の異常の病気などがあります。リンパ節が腫れるだけではなく、発熱や発疹や他の臓器障害など、色々な症状を同時に起こす病気が多いです。

 Bの代表は癌の転移や悪性リンパ腫というリンパ球の癌です。胃癌や肺癌、乳癌などの癌は、ある程度進むと周りの臓器に転移することがあります。リンパ節は癌細胞が転移しやすい臓器なので、リンパ節に転移した癌が大きくなって腫れることがあります。どんな癌でも初めのうちは症状が現れないことが多いので、リンパ節転移で初めて見つかることも少なくありません。一方、悪性リンパ腫は、リンパ節に待機しているリンパ球そのものが悪性化して大きくなってしまう病気です。「リンパ節の癌」だと思えば良いと思います。

検査と治療
 リンパ節が腫れた場合、血液の検査とCTなど画像検査で、多くの場合は原因を知ることができます。それでも診断がつかない場合や、悪性リンパ腫が疑わしい場合など、リンパ節生検という、腫れているリンパ節を取って調べる検査をすることがあります。

 治療は、病気の種類によって様々です。風邪のように自然に良くなる病気なら特別な治療をする必要はありませんが、膠原病のように自然には良くなりにくい病気や、癌の転移や悪性リンパ腫のように放っておくと悪くなる病気は、早く診断して治療をする必要があります。

 首や脇の下、鼡径部を触ってみてください。腫れていませんか? 気になることがあったら、病院で相談してみましょう。